「森下さんは、仕事楽しそうでいいですね、ストレスなんて無いんじゃないですか?」。時々、選手がそんなことを聞いてくる。すかさず「おー、その通り楽しいよ。でも、ストレスはあるさ、お前みたいに言うこと聞かないヤツの相手をしなければいけないんだから」と笑って返事をする。そうなのだ、選手が言うように、私は仕事が本当に楽しいと思える。これは有り難いことである。私がこの仕事に就いたのは29歳の時。そして、今のように高校生や大学生の部活動のトレーニング指導の仕事がメインになって18年。これは、もう意識的にそうなったのではなく偶然にも、50になっても、自分自身が高校や大学時代に部活に打ち込んだ、あの頃の気持ちに近いままで仕事ができているのだ。高校2年の野球部のとき、冬のトレーニングメニューは私が考えて皆んなにやってもらっていた。だから、本当にやっていることは大して変わらないのだ。当時も今でも考えていることは、同じである。「どうしたら、強くなれるか?」
違うのは、お金をもらっているかいないかと、自分が強くなるのではなく、どうやったら選手達が強くなるのかを考えているかってこと。しかし、自分が強くなることより、選手が強くなることの方が、もっと難しい。が、選手が成長した時を感じた時は、自分が成長した時よりも嬉しい。
選手としてのキャリアを閉じたばかりのイチロー選手(どうしても、選手と言ってしまう)が、メジャーリーガーの選手の方が日本の選手より趣味に近い感じで野球をやっていると語っていたことがあるのだが、私も稼ぐ額こそ雲泥の差だが、今の仕事は趣味に近いのだ。「好きこそものの上手なれ」とは、ホントにそう思う。50過ぎてもこの感覚でいられる自分は幸せモンである。