まだ私が個人事業主になる前だから18年以上も前のこと。会社から派遣されて私が担当になった2校目の高校野球部のチームは、かつては何度も甲子園に出場したことのある名門だった。何回か指導にお伺いすると、顧問の部長の先生が私にこんなことを話してくれた。
「森下さんって、謙虚なところが良いですよね」と。私はこう答えた。
「謙虚というか、自信が無いだけだと思います」と。それは、本当に私の正直な気持ちだった。まだ、それほど現場経験もない私にとって、その名門チームのサポートをすることは、良くも悪くもプレッシャーであった。もちろん、自信など一つも持ち合わせていなかった。しかし、有り難いことにその先生は、そんな未熟な私を受け入れてくれた。今は残念ながら、そこチームのサポートはしていない。その先生も、別の学校に異動してしまった。でも、その先生とはウマが合うと言っては失礼なのだが、今でも連絡を取らせてもらっていて、時々お会いする機会がある。50を過ぎても、相変わらず、私は自信がないままだ。ただ、最近思う。プロとしてはいかがなものかと思うが、自信が無いことは、もしかしたら私の武器なのかもしれない。何故なら、今だに自信が無いから、学ぶことだらけなのだ。人生とは不思議なものだ、自分の出来の悪さのおかげで、知りたいことを知ったときや、出来なかったことが出来た時の喜びを味わうことが、たくさんできているのだから。「学ぶことをやめたら、指導者をやめなければいけない」とは有名な言葉だ。ならば、私のように自信がない指導者がいても、学び続けてさえいれば、その資格はあるのかもしれない。