森下コラム

一昨日の午前中の高校野球部のトレーニング指導。途中まで、とてもおとなしく静かに取り組んでくれていた。しかし、途中で感じた。昨晩、school of movement代表の朝倉さんが、教えてくれた、「ドリルが上手くなることが目的ではない」という話。これは、まさにドリルを規則正しくやっていることが目的となってしまっている典型ではないかと。2人組でやっていても、お互いほとんど何も教え合うこともなく、待っている時間に自分で今やっている動きをやろうする選手もいない。1時間の予定のうち、残りは30分。なんとか、この上っ面の静かさを打破しなければと指導しながら無い頭で考える。集まってもらう。
「皆んなは、ブルースリーって知ってる?」
1人の選手が、マネをしてくれた。皆んなが笑う。空気が和む。
「そうそう、それそれ、彼のカンフーの映画で有名なセリフがあるんだよ。何だっけ?」
その子に聞く。「考えるな、感じろ!」「そう、今のトレーニングをしていてもさ、人によって感じ方が違うんだよ。違っていいんだよ。」
少し全体的に明るくなってきたところで、残りは10分。テーマは減速だ。
「ムーブメントトレーニングの仲間のトレーナーの人でさ、元キックボクシングの世界チャンピオンの人がね、フェイスブックに右ストレートでダウンを奪う動画をアップしてくれたんだ。
そして、その人がねその強烈な右ストレートのポイントを一つだけあげていたのだけれど、何だと思う?」
と、何人かの選手に質問する。
「股関節!?」
「そうそう、その人はこう言うんだよ。前足を刺すようにって!」
私がパンチのモノマネをしながら、イメージしてもらう。「前足でブレーキをかけるから、体幹が周り強いパンチが打てるんだよ。野球のピッチャーも、バッティングも同じなんだよ。だから、今からやる減速の動き、これっめちゃくちゃ大事なんだよ」
選手たちは、私の動きを見て笑うが、先ほどまでの重たい空気感を変えることができた。先ほどまでは、ほぼ無言でやっていたのだが、選手たちが楽しみながら、笑顔で取り組み出した。終了後、こんなことを伝えた。
「3年生は、もう残り2ヵ月無いんだけど、あとは皆んながどれだけイマジネーション、想像力を持ってやれるかだと思うよ。あー、このドリルはバッティングの軸足の動きか、とか、投げるときの前足の動きかとか、って」

改めて思った。もっともっと、選手たちの感覚を引き出せる指導ができるようになりたいと。そのためには、選手自身が考える時間、選手同士で教え合う環境を作ること、私のコーチとしての修行は終わることがないようなのだ。